専門医に聞く|かしま駅前歯科クリニック・木下正彦先生「そもそも歯周病ってどんな病気なの?」


成人の8割がかかっているというのに、初期段階では痛みがないため、そのままにしている人が多い歯周病。しかし、症状が悪化すると歯の根の回りの骨が溶けて、グラグラになり、最後は歯が抜けてしまう恐ろしい病気です。
そんなこわ〜い「歯周病」について、専門歯科医の木下正彦先生に伺いました。

かしま駅前歯科クリニック・木下正彦院長

実は、木下先生は小ネタ隊の主治医でもあるのです。平成21(2009)年の開院以来、かれこれ10年間お世話になっています。年に3回ほど、定期的に歯と歯ぐきの間の溝を掃除してもらっているため、虫歯はほとんどなし。しかし、これだけメンテナンスしていても、歯周病は完治することはありません。

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歯周病ってどんな病気なの?

歯周病についてわかりやすく説明してくれる木下先生
隊長
歯周病とはどんな病気ですか?

 

木下先生
歯周病はかつては歯槽膿漏と呼ばれていました

 

厚生労働省の「歯科疾患実態調査」によると、35歳以上の大人の約8割が歯周病を抱えていると言われており、炎症が表面の歯肉だけに限られている歯肉炎を加えると、9割の人が抱えている非常にポピュラーな病気です。

歯周病を起こす特有の細菌によって歯ぐきと歯の接着が破壊されて、歯と歯ぐきの溝、いわゆる歯周ポケットが深くなっていきます。つまり歯周病は歯周ポケットの中に棲む細菌が起こす感染症なのです。

細菌は骨を溶かす毒素を出すため、気づかない内に歯の根の周りの骨が溶けて、グラグラになり、最後には歯が抜けてしまいます。

隊長
そんな恐ろしい病気なのに、治療しない人が多いのはなぜ?

 

木下先生
初期段階では痛みはほとんどなく、自覚症状もないからです

 

歯周病は初期段階では、痛みもほとんどなく、自覚症状がありません。歯周病は「静かな病気」(サイレント・ディジーズ)とも呼ばれていますが、静かに進行し、気づいたときにはかなり悪化しているというケースが多くなっています。

歯周病を放置しておくと、歯が抜け落ちるだけでなく、さまざまな病気の原因になります。口臭はもちろん、糖尿病や脳血管障害、心臓病・動脈硬化、肺炎、メタボリック症候群など、全身の病気とも関係していることが最近の研究で明らかになってきました。

木下先生が歯周病に興味を持つようになったのは、学生時代のこと。北杜夫の世界に憧れて、神戸からはるばる進学した東北大学歯学部を卒業後、歯周病研究のオーソリティー・大阪大学歯学部に研究医として勤務します。さらに、岡山大学歯学部でキャリアを重ね、ハーバード大学歯学部へ留学。

なんと、小ネタ隊の主治医は一見すると、そこらへんにある町の歯医者さんなのですが、実はエリート中のエリート、秀才中の秀才だったのですね〜。

 

歯周病の治療方法は?

では、歯周病の治療はどのようなことをするのでしょうか?

歯周ポケットが3mm程度の場合は、通院の必要はほとんどないそう。バイオフィルムと言われる細菌の膜状のかたまりや歯石を歯科用の器具で除去し、歯周病ケアの歯磨き方法をマスターすればほぼOK。

これが4mm以上になると、歯医者さんでの治療が不可欠になってきます。残念ながら、小ネタ隊は年に3回メンテナンスをしてもらっているというのに、毎回4mm以上。ちょいとケアを怠ると、すぐに6mm以上の重度状態に陥ってしまいます。

 

隊長
歯周病の治療方法について教えてください

 

木下先生
キュレットで歯の周りに付着した汚れを除去します
歯周ポケットにこびりついた汚れを除去するキュレット

 

歯周ポケットが4mm以上になると、歯ブラシだけでは深い溝の中のバイオフィルムや歯石はとれません。キュレットという専用器具を使い、バイオフィルムや歯石を掻き出し、歯根の表面をツルツルにしていきます。さらに溝の中をクスリで洗浄することで、歯茎がひきしまり歯周ポケットが浅くなれば治癒に向かいます。ただし、きっちりとブラッシングを行わないとすぐに再発してしまいます。
溝の中の掃除をしても、歯周ポケットから膿が出たり出血が続く時は、抗生物質のペーストを用いた治療を行います。

それでも改善しない場合は、歯ぐきをめくって外科的に歯周ポケットを浅くする“フラップオペ”という手術を行います。しかし、手術は「怖いから」と嫌がられる方がほとんどなので、定期的に溝の中の掃除を行う治療を続けるということです。

 

隊長
な〜るほど、小ネタ隊はブラッシングに問題があったわけですね。

 

大切なことは自宅と歯医者さんでのケア

かしま駅前歯科クリニックの院内

 

木下先生
歯周病には自宅とクリニックの両方のケアが必要です

 

歯周病は非常に再発しやすい病気です。また再発してもほとんどの場合痛くないので、気づかないうちに進んでしまう恐ろしい病気です。
そのため自宅での毎日のきっちりとした歯磨き(ホームケア)と、クリニックでの歯周病が再発していないかの検診と歯磨きで取れない歯ぐきの溝の中の歯周病菌の除去(オフィスケア)の両方が必要です。

ホームケアとオフィスケアのどちらかが欠けると歯周病の再発を防ぐことはできません。

 

歯間ブラシは欠かせない

隊長
ま、オフィスケアの方は、木下先生にお任せするとして、正しいホームケアの方法を教えて下さい

 

木下先生
歯間ブラシで「ながら磨き」を実践しましょう

歯ブラシだけでは溝の掃除は不自由分です。歯間ブラシやデンタルフロスを併用してしっかり丁寧に歯垢を除去してください。時間は歯並びなどにもよりますが、できれば5分はかけてほしいですね。洗面所で磨くよりも、たとえば湯船に浸かりながらとか、テレビを見ながらなどの「ながら磨き」をお勧めします。

超面倒くさがり屋の小ネタ隊が、自覚症状のない歯周病治療のために、10年にも渡って定期的なメンテナンスを続けてこれたのは、木下先生のおかげ。なんせ、定期検診の連絡をハガキで送ってくれるからに他なりません。

ま、クルマやバイクの定期点検みたいなものですね。

何かあってから対処するよりも、コツコツ定期点検を受けるほうが、結局、安くすみますし、何より長持ちします。

歯は健康のバロメーター。自分の歯で生活するためにも、歯周病対策には手抜きは禁物です。

 

取材協力
かしま駅前歯科クリニック
大阪市淀川区加島3-2-15
TEL.06-6307-6480

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