まずは上の写真を見て下さい。飛び込みではかなり勇気がいるなかなかの店構えだとは思いませんか。
過去、数々のディープなエリアに突撃取材してきた小ネタ隊をもってしても、しらふでは根性が要りそうです。
ま、飛び込んだ日はかなり出来上がっていたので、全く問題はありませんでしたが…
「実は、飛び込みのお客さんは結構多いんです」と、語るのは店主の上村一暁さん、35歳。
小ネタ隊のように、「何やら面白そうな予感」とおそるおそる覗く客が多いのだそう。
今回は、大人の好奇心を刺激する隠れ家的バー「Inspire(インスパイア)」を紹介しましょう。
昭和の香りがするお初天神横丁
お初天神の右手の方に、昭和の香りがプンプンする細い路地があります。かつてはオヤジたちの聖地で、おでん屋やら焼き鳥屋が軒を連れていました。朝日のマークが入ったビールグラスに冷や酒をグイッと。これがたまらんのでありました。
時は流れて、令和元年。久しぶりに昭和な婆さんに会いたく訪れたお初天神は、見事に若い女性たちの溜まり場と化していました。そこにはレトロな店構えのオサレなレストランが建ち並んでいたのです。
「あらら」。オヤジたちの聖地はいずこへ。若い女性たちにどんどん寝食されているではないですか。
しゃあないので、できるだけボロそうな店に飛び込みましょう。
いや〜。あまり分からなかったのですが、よくよく見るとかなりの年季もの。一見で、この扉の向こうに行くには覚悟と勇気が必要です。
で、開けてみると意外にオサレっぽいけど、2階に続くようです。
この階段、結構な急斜面です。ヘベレケだと登るのがかなり辛い。
落ち着いた雰囲気の静かな空間
階段を上りきると、そこは静か〜なバーでした。照明は暗め、椅子と椅子の間隔は広め、バーテンは寡黙そう。ええ感じではないですか。
それにしてもメニューらしきものがありません。ま、店内にはカールズも居てなさそうだし、ぼったくられる感じでもなさそうなので、バーボンをロックで注文。
「アテは何があるん?」と聞くと、カウンターの下からメニューらしきものが…
思わず、吹いてしまいそうになりましたが、なかなか達筆です。しかし値段は書いていません。やはりぼったくりバーなのでしょうか。
ワイルドターキーとミックスナッツで〆て1,400円。チョコレートはもらいもんだそうで、サービスしてくれました。チャージ料はなし。
むちゃエエ店やん!
お酒の種類は約300種。値段は1,000円から1,500円。カクテルのメニューはなく、お客さんとの会話の中から好みや分量を調節して出すのだそう。値段は900円から2,000円くらい。アテは乾き物のみで、たいたい500円と非常に良心的価格です。システム的には結構、適当っぽいのですが、バーに対するこだわりはかなりあるようです。
酔っ払いとの出会いで店を持つことに
学生時代からバー経営に興味のあった上村一暁さんが、インスパイアを始めたのは2014年9月1日のこと。30歳のときでした。大学を出て企業に勤めるも、バーへの憧れは強く、学生時代にアルバイトをしていたスポーツバーへ戻り、同時に北新地の老舗ショットバー「瀧」に入店。そこで腕を磨きながら、バー経営に思いを馳せていたときに転機が訪れます。
一人居酒屋で飲んでいたときに、ある酔っ払いと意気投合。バー談義で大いに盛り上がったところ、「兄ちゃん、うちの店やらんか?」と。インスパイアの家主との出会いでした。
真っ白な紙に自分自身のバーを描きたい
「店の備品や内装、店名は、かつてのオーナーが手がけたもの。僕が持ち込んだものと言えば、お酒くらいです」
「まったくの白紙状態から、僕自身の店を作ることが夢です」
現在、インスパイア店主として5年目。10年を目処にすべて自分で手がけた店を持ちたいといいます。
そのために、昼間はギャラリーの改修工事や、店舗のリノベーションをボランティアで手伝っているそう。
前オーナーのときは女性客が多かったそうですが、上村さんが経営するようになって男性客が増えたそうな。現在7割近くが男性客といいます。
「一人で来てもくつろげる空間、ゆっくりできる空間が理想です」
その言葉通り、インスパイアの客は大人しく飲む人ばかり。ヘベレケになる人はおらんらしいです、はい。
インスパイアで出会い、上村さんが結びつけてゴールインしたカップルも二組いるそうな。
「彼女もおらんのに、キューピット役ばっかりです」
「お初天神って心中の場所ですよ」
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