毎年3月上旬に、通天閣や天保山の観覧車などが緑色のネオンサインで彩られるのをご存じでしょうか。これは「40歳を過ぎたら目の定期検診を!」という日本緑内障学会が行っている啓蒙活動の一つです。今回は、2015年よりスタートした「ライトアップ in グリーン運動」の発案者でもある、大阪・福島アイクリニックの桑山泰明先生に「緑内障」について伺いました。
一番怖いのは、自覚症状がないこと
実は、桑山先生は、小ネタ隊の主治医でもあるのです。桑山先生が大阪厚生年金病院(現:大阪病院)の眼科部長だった2008年に執刀いただいてから、かれこれ10年以上にわたって小ネタ隊のお目々の管理をしてもらっています。
小ネタ隊が緑内障を患ったのは、30歳代のとき。コンタクトを新調する際、強度の近視だったため、「念のために視野検査をしておきましょう」と、心斎橋のイワサキ眼科で言われたことで発覚しました。緑内障は自覚症状のない目の病気ですから、早期の段階ではなかなか発見できません。目の神経が消失していくことで、徐々に視野が欠けていき、放っておくと最終的には失明に至るという恐ろしい病気です。
難儀なのは、最初のうちは日常生活ごときではまったく気づかないこと。目はキョロキョロ動きますし、物を見るときはだいたい両目で見ているため、左目が右目を、右目が左目をという具合に互いの視野をカバーするからです。
早期発見でも継続が大切
せっかく岩崎先生に、早期の段階で緑内障を発見してもらったというのに、自覚症状は全くなく、特に日常生活に支障があったわけでもなかったので、ただでさえ面倒臭がり屋の小ネタ隊は、次第に通院しなくなり、点眼も止めてしまいました。
「あのときに治療を続けていれば…(泣)」と、今更ながらに後悔しますが、時すでに遅し。後の祭りです。
当記事をご覧になった読者の皆様は、年齢にかかわらず、ぜひ近くの眼科で検診されることを強くオススメします。なんせ、緑内障は40歳以上の日本人の20人に1人が患う、失明率ナンバーワンの病気。しかも進行を止めることはできても、治ることはありません。「早期発見」「継続治療」と肝に銘じておきましょう!
気づいたときには相当進行している
「緑内障は視神経に障害が起こり、視野が狭くなる病気です。目と脳は約120万本の細い神経でつながっていますが、その神経の数が徐々に少なくなっていく目の病気です。外側から少しずつ見える範囲が狭くなっていき、病気がかなり進行するまで自覚症状はありません。気づいたときには相当進んだ状態で、治療が遅れると失明する場合もあります」と桑山先生。
小ネタ隊が「やばいな」と思うようになったのは、信号のない横断歩道でのこと。右から左に移動していたはずの歩行者が突然消えました。
歩行者がいないと思い、アクセルを踏んだ、その目の前に、歩行者が!
消えたのは歩行者ではなく、小ネタ隊の視野だったのです。フロントガラスとサイドガラスの間にあるフレームによって、右目と左目の視野が分断され、クルマの前を歩く歩行者が一瞬、視界から消えたのでした。慌てて急ブレーキを踏み、事なきを得ましたが、残念ながら小ネタ隊の緑内障はかなり進行していました。
全国から患者が訪れる緑内障の名医
点眼治療では進行を止めることができないため、福島区のハルタ眼科から紹介されたのが、同じ福島区の地域医療支援病院でもあった大阪厚生年金病院です。眼科部長の桑山先生は緑内障の専門医。後で知ったことですが、全国から患者さんが訪れる名医です。初診時には、紹介状があるにもかかわらず7時間待ちでしたが、「なっとく」です。
「一人の患者さんにより時間をかけたい」という思いから、2010年に緑内障と白内障の専門クリニック「福島アイクリニック」を大阪厚生年金病院の近くに開業。完全予約制の専門クリニックのため待ち時間は短縮されたものの、開院当初は3時間待ちは当たり前でした。現在、2人の先生に対してスタッフは26人。開院から10年近くが経ち、システマティックになったものの、1日あたり約70人の患者さんが訪れるため、2時間待ちは覚悟しておかなければなりません。
失明の危機はなくなったものの、日常生活に支障あり
小ネタ隊の場合、右目は点眼で、進行が悪化していた左目は2008年に手術を受けました。当時は入院1週間を余儀なくされましたが、現在では日帰り手術です。また、早期治療用の手術法も開発され、驚くべき進展を見せていますが、あくまでも進行を抑えるだけで、治ることはありません。
幸い、小ネタ隊の目は緑内障の権威・桑山先生から「150年たっても失明することはありません!」というお墨付きをいただいていますが、毎日の点眼と4ヵ月に一度の定期検診を余儀なくなれております。
また、視神経が少ないため、暗いところが苦手。さらに年齢を重ねるにつれ、夜間の運転に支障をきたすようになったため、クルマの運転も極力控えることにしました。
「30歳代のときに、治療を継続していれば」と悔やまれますが、皆さんは小ネタ隊の二の舞にならないように、ぜひ眼科検診を受けて下さい。
「ライトアップ in グリーン運動」とは
毎年3月上旬に全国各地で行われる「ライトアップ in グリーン運動」は、桑山先生が日本緑内障学会の理事を努めているときに手がけた緑内障の啓蒙活動です。
緑内障は早期発見と治療の継続が大切です。毎年3月上旬の1週間を「世界緑内障週間」と定め、世界各国でさまざまな啓蒙活動を行っています。日本緑内障学会では、2015年に「ライトアップ in グリーン運動」をはじめ、全国のランドマークをグリーンにライトアップする取り組みを行いました。
2015年5カ所から始まった取り組みは、年々増え、2019年には京都タワーや通天閣、天保山大観覧車、神戸MOSAIC大観覧車はじめ、国内150カ所がグリーン色にライトアップされました。
2020年は3月8日(日)〜14(土)までの1週間開催されます。
40歳を過ぎたら目の定期検診を!
日本緑内障学会が行った調査によれば、40歳以上の日本人における緑内障有病率は5%。20人に1人が緑内障の患者さんでした。しかし、実際に緑内障と診断されていたのは、そのうちの1割に過ぎませんでした。緑内障であるにもかかわらず、これに気づかずにいる人がいかに多いかが分かります。
緑内障はそのままにしておけば、いずれ失明するという失明率ナンバーワンの病気ですが、ほとんどの緑内障は治療を継続していれば進行を食い止めることができます。そして何よりも早期発見・早期治療によって、視野の減少を最小限に食い止めることができます。
残念ながら、危機感が薄かった小ネタ隊は、左真横に立つ人が全く見えないほど、視野が欠如していますが、手術以降、治療を継続することで、失明のリスクは限りなく低くなりました。
「40歳を過ぎたら目の定期検診を!」
以上、今回はかなり大真面目なネタでした。